Ⅰ:DMATの定義
DMATとは、災害発生直後の急性期(概ね48時間以内)から活動が開始できる機動性を持った、専門的な研修・訓練を受けた災害派遣医療チームである。DMAT1隊あたりの構成は、医師1名、看護師2名、業務調整員1名の4名を基本としている。
活動としては、被災地の病院、施設、地域に対しての指揮支援、物資支援、人的(診療)支援、搬送支援を想定している。
Ⅱ:法的根拠
DMATについては医療法(第三十条の十二の二)において災害・感染症医療業務従事者として位置付けられている。
また、DMATの派遣については、医療機関と都道府県との医療法(第三十条の十二の六 第一項)に基づく協定により、医療機関の業務として行われる。
DMATの費用支弁については、災害救助法等を根拠に行われる。
DMATの活動における補償については、都道府県加入の保険により行われる。
DMATの活動については、災害対策基本法に基づき中央防災会議により策定される防災基本計画にも明記されており、厚生労働省医政局医療計画課長発出の、「DMAT活動要領」にてその具体的内容を提示されている。
Ⅲ:費用支弁・補償]
DMATの活動における費用支弁については、災害救助法等を根拠に行われる。
DMATの活動における補償については、都道府県による保険加入等により行われる。
Ⅳ:DMAT登録者
日本DMAT隊員養成研修を修了し、厚生労働省に登録された者(または、それと同等の学識・技能を有する者として厚生労働省から認められた者)はDMAT登録者となる。DMAT登録者は、災害の急性期にDMATとして派遣される資格を有する。資格更新は5年ごとに行われ、有効期間内に、技能維持研修に2回参加することが条件となる。DMATの活動は、DMAT指定医療機関に所属しているDMAT登録者により実施される。
図 1被災都道府県DMATの派遣スキーム
図 2非被災都道府県DMATの派遣スキーム
Ⅴ:派遣
図1、図2にDMATの派遣スキームを示す。
DMATの派遣は、被災地域の都道府県の派遣要請に基づいて行われる。ただし、厚生労働省は、当分の間、被災地域の都道府県の要請がない場合であっても、緊急の必要があると認めるときは、都道府県等に対してDMATの派遣を要請することができる。
活動は、都道府県、厚生労働省より派遣要請を受けて、DMAT指定医療機関より派遣されたDMATにより行われる。
DMAT初動チームの活動期間は、その機動性を確保する観点から、移動時間を除いて48時間以内を基本としており、活動が長期間に及ぶ場合は、DMAT2次隊、3次隊の追加派遣が考慮される。
Ⅵ:DMAT研修の実施、修了者の状況
DMAT隊員養成研修は2025年3月までの間に、360回実施された。研修運営はDMAT事務局と兵庫県災害医療センターで分担して行っている。2025年3月までの間に18909人(医師5443名、看護師7934名、業務調整員5532名)のDMAT隊員が誕生している。
Ⅶ:DMAT地方ブロック区分
DMATの地方ブロック区分はDMAT活動要領において、北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州・沖縄の8ブロックが定義されており、平時においてはDMAT技能維持研修やDMAT地方ブロック訓練はこのブロック単位で開催されている。災害時においては、待機要請や派遣要請は都道府県もしくはブロック単位を対象に行われる。
図 3日本DMAT隊員認定後の研修等
Ⅷ:日本DMAT隊員認定後の研修
図3に日本DMAT隊員認定後の研修を示す。そのうち、「DMAT技能維持研修」「統括DMAT研修」「DMATコーディネーションチーム研修」の3研修について以下に概説する。
1) DMAT技能維持研修
新たに経験した災害から得た知見の周知、およびEMISなど各種情報ツールに関する技術のブラッシュアップを目的に、DMAT地方ブロックごとに2日間の研修を行っている。一度取得したDMATの隊員資格は5年ごとに更新が必要であり、この間に2回以上当研修を受講することが更新要件である。
2) 統括DMAT研修
とりわけ大規模災害では、多数のチームが参集して大きな組織として活動する。多数のチームを本部や指揮所で過不足なく効率的に運用するべく、DMAT運用の戦略・戦術、本部・指揮所の役割についての2日間の研修を行っている。各都道府県から推薦された、本部長になり得る医師のみが受講対象であり、当研修を修了することで統括DMAT登録者となる。
3) DMATコーディネーションチーム研修
東日本大震災などの大規模災害の課題として、膨大な調整業務に対する本部要員の不足やDMATの医療活動環境・生活環境を整える対応が不十分であることが挙げられた。都道府県DMAT調整本部やDMAT活動拠点本部等での本部業務を主に行う要員を育成することを目的に、DMAT運用の戦略・戦術、本部・指揮所の役割についての2日間の研修を行っている。当研修の受講が、DMATコーディネーター認定要件の1つである。
Ⅸ:DMAT事務局について
DMAT事務局は、厚生労働省からの委託を受けて国立健康危機管理研究機構が運営しており、東京都新宿区(国立健康危機管理研究機構本部キャンパス内)と大阪府大阪市(国立病院機構大阪医療センター内)の2か所に事務所を設置している。
平常時には、日本DMATや都道府県等の関係機関に対して、災害医療に関する研修や訓練の実施、また関連する研究の推進を通じて、資質の向上を図ることを目的としている。一方、災害・新興感染症の発生時には、専門的知見をもとに、被災地域への助言や関係省庁との連携・調整、DMATの運用調整などを行っている。
図 6 DMAT体制
Ⅹ:DMATの組織体制の特徴
DMATの特徴は、標準化教育を受けた個人が登録されていること、研修体制を整備することを通じて被災地医療体制の確立に寄与していることである。この標準化教育は災害で得られた知見に応じて事務局員が進化させ続けている。また、多数の研修開催により育成された研修指導者がDMATコーディネーターとなって災害時の指揮を執ることで、円滑な支援に繋がっている。(図4)
